出典について
毎朝みているものと背景にある考えで引いている言葉の、 出どころの話。
薦める以上、都合の悪いところも書いておく。 この2冊には、引用の帰属を誤っている箇所がいくつかある。 出典をたどる仕組みが無いために持ち込まれ、そのまま広まったものだ。
- 「刺激と反応の間には空間がある」をヴィクトール・フランクルの言葉として読まれている件。 フランクル研究所が公式に否定していて、フランクルは書いていない。 コヴィー自身も2004年に別の本の序文で、大学図書館で読んだ本にあった言葉だとしたうえで 「著者名を控えなかったので、正しい帰属を示すことができない」と書いている。
- 章の冒頭の「我々は繰り返し行うことの結果である。ゆえに卓越とは行為ではなく習慣である」を アリストテレスに帰している件。 考えはアリストテレスのものだが、この文はウィル・デュラント『哲学物語』(1926年)が 『ニコマコス倫理学』を自分の言葉で要約したものだった。
- 原則が自然法則であることを示す「灯台と軍艦」の逸話。 米海軍が1996年に、古い小咄であって実話ではないと公に回答している。
そしていちばん上に掲げている「思考を植えれば言葉を刈り…」の言葉も、 特定の一人の言葉ではない。 発祥は19世紀のイギリス・アメリカのキリスト教の説教で、 骨格は聖書の「人は自分の蒔いたものを刈り取る」(ガラテヤ6:7)にある。 6段がそろう最古の印刷は1885年の米紙、いまの形は1977年の米紙まで下る。 日本ではマザー・テレサの言葉として広まっているが、これはほぼ日本だけの帰属で、 本人の一次資料は無い。
これを書くのは、本の価値を下げるためではない。 出典をたどれることと、中身が効くことは別の話だからだ。
ただ、誰か有名な人が言ったから正しい、という受け取り方をしてほしくない。 言葉の重みは出どころではなく、自分で試して効いたかどうかで決まる。 私が10年以上これを続けているのは、権威があるからではなく、実際に効いたからだ。
引用元:スティーブン・R・コヴィー『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版, 2013)/ 『7つの習慣 原則中心リーダーシップ』(キングベアー出版, 2016)。 このサイトは著者・出版社・FranklinCovey社とは無関係な個人の記録であり、公認のものではない。